2023年コロナウィルスの猛威もようやく終わったかと思わせそうな11月。私は20年以上勤めた会社を50歳を過ぎたことを機会に退職した。
一般企業も政治の世界のような、利権、忖度にまみれた。定年退職した先輩は下請けの企業に天下り。元部下を接待として風俗店やら高級料理をご馳走したりして、元の職場の仕事を斡旋し、それまでの企業の取引を解除させ独占する。そんな薄汚れた世界に嫌気がさしてきて‥
退職して次の仕事を探すため、私は今までの心労を癒すため?に奈良県の長谷寺にぶらりと足を運んでいる。小学生の遠足で特に見応えのある寺や仏像があるわけでもなく、やたら長い階段を登った記憶があるだけだけど、何故だか今日、この時のことを思い出し急に行きたくなった。
揺られる電車の中、ざわついた大阪の街から、緑の多い景色、昭和風情の残る街並み、何か現実から逃れられるような気になってきた。
大阪からは2時間足らずで着いた。駅に到着し寺に向かおうと歩き始めたのだが、電車を降りてから何か後ろに気配を感じて仕方がなかった。
時間はまだ朝の七時過ぎ、人は殆ど見かけない狭い県道を歩き始めると、気配はまだ感じて、臆病な私は後ろを振りかえずできるだけ気にしないようにしていた。
「ササジマさん?」
「ぅうわああ!」「びっくりした」
「は、はい」
声を掛けられて、そのずっと感じていた気配は間違いではなかった。年にして30代か40代前半?の普通の奥様と言ったら怒られそうだけど、肌が白い綺麗な奥様と言った感じだろうか。
「ごめんなさい、脅かすつもりはなかったんだけど、コロナが流行る前に一度滝井で‥、お客さんで来てくれたかと思うんですけど」
「滝井ぃ??‥あああ!あのおさげの女の子!」
「そうです、また来てくれるかと、待ってたんですから!」
「はいっ‥ごめんなさい。でもなんで僕の名前を知ってるんですか?」
「ササジマさん、30年ぐらい前になると思うんだけど○✖️製作所でバイトしていませんでした?」
「え〜っ?どうだったかなぁあ、30年前と言えば僕フリーターだったから色んなバイトしてたからなぁあ、○✖️製作所かぁ?‥ビデオの部品の組み立てのバイトはしたことあるけど。」
「そう!それそれ!私は当時16歳の高校生。ササジマさんは、20代イケメン」
「僕が?イケメンだったんですか?(笑)」
「そうですよ!他のバイト、パートさんからも人気あったんだからぁ」
「告白しようと思ったら、何の予兆もなく辞めちゃったからササジマさん」
「全然っ覚えていない‥で、何十年か後に滝井で‥」
「その時は、似ているとは思ったんだけど確証は取ってなかったから、今の今までずっとそうじゃないかなぁあと思ってたんです」
少し下を向いて、○✖️製作所のことを思い出してみた。
「あの2人組で、一人は金髪の女の子と黒髪のショートボブの子?」
「そうです!その金髪の!」
「ボブの方じゃなかったんだ(笑)」
「今の私の髪の毛は黒いもんね、当時は18になるまではずっと金髪だったの」
「そうだね今では想像つかないねぇ、ごめんなさい、お名前聞いてもいい?」
「あっ!ごめんなさい。礼儀知らずで。フジタミチコです」
「あっ!みっちゃん!ボブの子から<みい>って言われた!」
「そう!思い出してくれました」
狭い県道で、しばらく話をしていたもんだからかは分からないが、近くの家屋からお年寄りが出てきた
「あっ!すいません。出ます」
私たちの話し声がうるさかったのか、たまたま出てきたのかは分からないが、僕たちは歩を進めることにした。
「今日は、長谷寺に?」
「ううんううん!違います。特にあてはなかったんだけど、アテもなく電車に乗っていたらササジマさんらしき人が居たので、アテがないのでササジマさんらしき人が降りたら私も降りようかと思って」
「ササジマさんは、長谷寺に?」
「そう、何か突然行きたくなっちゃってね。時にコレ!ってものはないんだけど、なんか歩きたくって」
「じゃあ、同行させてもらってもいいですか?」
「もちろん」
一人でのんびりと、と思ってここに来たのだが
思わぬ出会いというか、再会というか
僕は彼女の手を握り、長い長谷寺までの道のりを共にした
セクシー女優